ほとんど過去の遺物となりつつあるMT(マニュアルトランスミッション)車。運転免許にAT限定が登場し時が流れ、現在では新しく運転免許を取得する人の半数以上がAT限定だというこのご時世、敢えてMT車に乗るメリットはあるのでしょうか?MT車一筋十数年、現役整備士である筆者がメカニックならではの視点で検証してみたいと思います。

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そもそもトランスミッションって何をしてるの?

MT車やAT車の”T”の部分であるトランスミッションの役割とは何なのでしょうか?

基本的な自動車にはエンジンがついていて、エンジンの回転数が上昇すると車速も上がりますが、機械である以上エンジンの回転数には限界があります。またエンジンには得意とする回転域がエンジンごとに決められていて、その回転域を維持しながら走行するのが一番効率の良い”走り”となるので、エンジン回転数は維持しつつ、車速を変化させる必要があります。

その為トランスミッション(変速機)を用いてギア比を変化させることによって、エンジン回転数と車速(タイヤの回転数)の関係をその都度変化させ、状況に応じた最適な”走り”を実現しているのです。

余談ですがトランスミッションの段数(6速や8速など)が多い方が性能が高いとされる所以は、ギア比の差が小さければ小さいほどエンジン回転数の変化を少なくすることができ、より効率の良い走りができる為とされています。

このギヤの切り替えを手動でやるのがMT車、自動的にやってくれるのがAT車なのです。

MT車メリット①〜運転していて楽しい!〜

早速本題に移ります。

おそらくMT車を選んだ方の一番の理由がこちらになると思います。”車を操る楽しさ”と言ったら言い過ぎですが、自分でギヤを自由に選択できるので、思い通りのタイミングで思い通りのギヤを使って走ることができます。

例えば軽い上り坂を走行中、ちょっと加速したいと思った際にアクセルを踏み込みますが、同時にシフトダウン(ギアを一段下げる)しないとエンジン回転数が上昇しづらく、うまく加速できません。AT車の場合アクセルを踏み込むと、踏み込み量とエンジン負荷とをコンピューターが演算してシフトダウンしますが、そのタイミングには若干のタイムロスが生じます。

しかしMT車ですと自分が加速したいと思った時に自由にシフトダウンできるので、タイムロスが少なくスムーズな加速をすることができるのです。

一例ですがこれがMT車の方が運転が楽しいと言われる理由になります。

MT車メリット②〜燃費が良い〜

こちらも有名な話ですが、同車種同エンジンで比較した時にAT車に比べMT車の方が燃費が良くなります。

これはエンジンの動力をタイヤまで伝える仕組みがAT車とMT車とでは異なる為に差が生じます。信号待ちなどで車が停車した際は、エンジンは回っていますがタイヤは止まっている状態です。しかし走り出す時にはタイヤも回転し始めます。

つまりどこかでエンジンの動力を断ち切ったり繋いだりしているのですが、この仕組みがAT車とMT車では異なるのです。AT車では”トルクコンバータ”と呼ばれる部品を使って動力を断ち切ったり繋いだりしていますが、繋いでる時の動力伝達をオイルの力で行なっています。機械的に繋げる訳ではないのでここでどうしてもパワーロスが生じてしまうのです。

一方のMT車では”クラッチ”(左足で操作しているやつです)を用いて動力を断ち切ったり繋いだりしていて、こちらは機械的に繋げることができ、ロスが生じることがない為その差が燃費の差となって現れます。

極端な話、MT車の方がエコカーなのです。

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MT車メリット③〜壊れにくい〜

最近になってこそ技術革新のおかげでAT車が増えてきましたが、少し前までは大型車(トラックやバスなど)はほとんどがMT車でした。現在でも半数以上はMT車だと思います。それはなぜでしょうか?

それはMTの方が”壊れにくい”ことが理由の1つに挙げられます。乗用車の場合、10万kmほど走ればそろそろ買い替えどきかなと思うところですが、大型車の場合10万キロなんて言ってしまえば慣らしが終った程度で、100万キロ走る車もいるほどです。

耐久性も重要視される大型車にMTが多く採用されているのには、その内部構造の簡素さにカギがあります。基本的に機械は構造が複雑になればなるほど故障しやすくなるものです。ATは自動で変速する関係で、MTに比べると内部が複雑な作りになっています。ですのでその分故障も多く、耐久性が重んじられる場面ではMTが採用されることが多いです。また大型車の場合パワーも大きいので、ATだと十分に力を伝えることができない(②の理由に近い部分があります。)のでMTが多く採用されている面があります。

余談ですが、近年増えてきた大型車のAT車、実は乗用車のATとは構造が全くと言って違うもので、どちらかというとMT車のクラッチ操作とシフト操作を自動化したトランスミッションと言えるものになっています。”2ペダルMT”と呼ばれることもあります。

ですので先ほどの耐久性や動力伝達の問題も乗用車のATに比べればかなり改善されていると言えます。鋭い方なら”じゃあそのATを乗用車にも使えばいいじゃないか”と思う方もいると思います。実はすでに実用化されていて、フェラーリやポルシェなどのスーパーカーやスポーツカーと呼ばれる車のATは、この2ペダルMTを採用している車がほとんどです。しかしコストがかかるので、一般大衆車のATがこの機構になることは難しそうです。

現在新車で手に入るMT車は?

簡単にMT車のメリットについて説明しましたが、意外とMT車いいかもと思っていただけると嬉しい限りです。そんな方のために現在新車で購入可能なMT車をピックアップしてみたいと思います。AT全盛のこのご時世、そこまで選択肢がないのが残念です。

 

今回は登録車(普通車)かつ国産に絞ってピックアップしてみました。
リストを見てみるとマツダは頑張っているのが良くわかります。主要車種のほとんどにMTの設定があり、MT車好きにとっては救世主ですね。これはマツダが”人馬一体、車を操る楽しさ”を大切に車造りに取り組んでいるからなのです。
今リストアップしたのは新車ですので、目ぼしい車種がなければ過去に遡り、中古車を探せばまだまだ選択肢はたくさんあります。
ぜひお気に入りの一台を見つけて、楽しいMT車ライフを満喫してみて下さい。

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